音楽用語のお題より sforzando [スフォルツァンド]

貴方と紡ぐ壮大な



―シンフォニー『Ｔｏ　Ｕ』―



どれみふぁそらしど
晴れた蒼空に雲の五線譜
小鳥が音符役
ト音記号は太陽で
ヘ音記号は月
空中スコアの出来上がり
指揮台はこの丘の上
流魂街を一望できるの
指揮棒は、そう彼女!
熱い音色を作ってくれるわ
指揮者は勿論あたし
燕尾服ではないけれど
黒は一緒で死覇装束
観客はただ一人
特等席をとっているから
さぁ、チューニングを始めよう!
そよ風が奏でたＡ（アー）の音
ここにはヴァイオリンもトランペットも
フルートもチェロもないわ
オーケストラはあたしの声と風と
小鳥のさえずり
それから旋律は彼が奏でるの
チケット見てくれたかしら？
こっそり置いたの

「雛森」

振り向いたら、お客様到着
奏でる旋律　白銀と碧緑の旋律

「もう、びっくりしたぁ」
「それより真剣でやんのか？」
「うん!お願いします」

カチャリと構える指揮棒
緊張感を裂いて始まるよ
金属音と共に始まる激動のフォルテ
白銀と碧緑の旋律
漆黒と紅の対旋律
対位法で絡まって絡まってほどけてく
ああ知ってる
貴方というシンフォニー
熱い熱い　くるくる目がまわる
クレッシェンドで掻き立てて!
ああ後ろ 気づかなかった
押し倒されて 喉元に冷たい切っ先

「今日の訓練も終わりな」
「もー」
「もーもー言ってると牛になるぞ」
「ならないもん、バカ」
「取り敢えず、訓練つきあったんだ。
なんかしろよ」
「えー、…わかった!
新しくできたお店の餡蜜は？」
「もっと甘いの」
「あれ、日番谷君
甘いの駄目じゃ…」

塞がる唇
荒い吐息
切ない水音
テンポは60でいたいのに
120になってしまう
恒常なんて容易く崩壊
さぁ、不規則なシンフォニー
止まらないから
そのままフィナーレに向かって!!
もっと舌を絡めてよ
剣より愛の訓練を
会える口実欲しいだけ
貴方の休憩全部あたしと
愛を奏でてほしいの
抱き締めて抱き締めて
エスプレッシーボ!!
快楽の享受にはまだ早すぎるから
せめて溶けるくらいくっついてたいの
言えたらいいのに
言えないのはいじっぱりだからじゃないよ
シャイだからでも
引っ込み思案だからでもないの
お客様はあたしより高貴ですもの
だって隊長様ですもの
ノーブルノーブル

「桃」

だからせめて今だけ

「愛してる」

ルバート
あたしの心を盗んで
指揮棒は落ちた

シンフォニーは終わらない